月の光(トウキョウソナタ)
ちょっと前にニューヨークタイムズの映画レビューで「トウキョウソナタ」が取り上げられていた。どこかでやっていないかなあ、と思って調べたら池袋の新文芸座で今日から3日間、「Tokyo!」と「トウキョウソナタ」の2本立てで上映されるとな。
そんなわけで行ってきました、新文芸座へ。
「Tokyo!」は、実は観るつもりではなかったのですが、上映時間を勘違いしていたので見ることになりました。寝ちゃったらどうしよう・・・とちょっと心配でしたが、まったく眠くない映画でした。むしろ、映画の背景までじっと凝視したくなるような作品で面白かったです。3篇の短編映画からなるオムニバスで、海外の監督たちがそれぞれの視点で東京を舞台にした作品をつくったらしい。でも、出演俳優は日本人がほとんどです。
「トウキョウソナタ」はキョンキョンがいい味だしてました。崩壊しかかっている家族の物語ですが、ユーモアも交えて描かれているのでそんなに悲惨じゃありません。ラストシーンンで次男がピアノを弾くシーンが、すごく印象的です。(手と演奏が合ってないんじゃないの~とか意地悪なことを考えちゃって頭のどこかは冷静なはずなのに、不思議と心が浄化されるのを感じるのです。。。)
あらすじは、リストラされた父親と、専業主婦のお母さん、息子二人の日常を描いたもの。大学生の長男はアメリカの軍隊に志願して家を出て行き、次男はピアノを習いたいのに父親に猛反対されたため、給食費をちょろまかしてこっそりピアノのレッスンを受けている。父親はリストラされたことを家族に打ち明けられず、スーツを着て会社に行くふりをして公園で昼食の配給の列に並んだりする。んで、話はどんどん悲惨になっていき、父親のリストラ仲間は妻を道連れに無理心中するし、次男はピアノのことで父親と喧嘩になって階段から転げ落ち、怪我は大したことはなかったものの家出して警察に捕まり拘置所へ入れられ、父親は車にはねられ、家には強盗が押し入りキョンキョンは連れ去られ、ついに家の中は空っぽになる。こんな風に書くと本当に暗~いだけの話みたいだけど、けっこう笑いもあって、実際、映画館の中で斜め後ろにいたおばあさんは声をたてて笑っていた。
さて、空っぽになった家に、次男が戻り、次にキョンキョンが戻り、そして父親も戻ってきて、3人で、何事もなかったかのようにご飯を食べる。それぞれが経験してきたことは重苦しいのに、それでもああやって一緒にご飯を食べているところが家族の絆、というよりも、逃れることのできない日常の恐ろしさのようにも見えました。
ラストシーンでは次男が音大の附属中学の入学審査でドビュッシーの「月の光」を弾きます。このピアノがとても素晴らしくて、聴いていたらなんだかじわぁっと涙がこみ上げてきました。今までの悲惨さがここですべて浄化されていくような、魔法みたいに美しい音色です。この曲、前から知ってるけど、こんなにきれいな曲だったっけ? とビックリするほどに。「月の光」が、「月の光」を越えてしまったような感じ。この映画の中でずっと積み重ねられてきた時間が、「月の光」の色合いを変化させたのかなあ・・・。不思議な体験でした。
映画の中で父親役の香川照之の目にもじわっと涙がこみあげるのですが、とてもわかる、あの気持ち。このラストシーン、あまりにも荘厳です。
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